プロテイン

ホエイプロテインの違いを山本義徳先生が解説!目的に合わせたWPC・WPI・WPHの選び方

ホエイプロテインは、本格的にスポーツに取組むアスリートから、趣味で筋トレを楽しむ人にいたるまで、あらゆる人が摂取しているサプリメントです。身体のパフォーマンスを上げたり、筋トレの効果を高めるサプリメントとして注目されています。

ホエイプロテインとして広く流通しているWPCとWPIの違い、そしてなかなか耳にすることは無いWPHについて解説します。

筋肉作りにはホエイプロテイン

プロテインにはさまざまな種類がありますが、ホエイプロテインとは牛乳を原料として作られたプロテインのことです。日本語では乳清のことを指すホエイとは、牛乳から乳脂肪分やカゼインなどを除いた後に残る液体のことです。ヨーグルトの蓋を開いた時に、上に浮いている水分がホエイだといえば馴染みがあるのではないでしょうか。

そのホエイを、粉状に加工したものがホエイプロテインと呼ばれます。牛乳に含まれるたんぱく質の割合は、たったの3.3%です。そのうちの80%がカゼインで、残りの20%がホエイです。ホエイプロテインは、牛乳の貴重なたんぱく質の部分だけを取り出したサプリメントであると言えるでしょう。

ホエイプロテインは、他のプロテインと比べて筋肉作りに適したプロテインとして知られています。筋肉の材料となるBCAAが多く含まれ、筋肉に栄養を運ぶホルモンであるインスリンの働きを高めてくれるためです。

ホエイプロテインまたはカゼインプロテインを摂取する2つのグループが、10週間に渡ってトレーニングを続けたところ、ホエイ群のほうが除脂肪体重と筋力に大きな増加を示したという研究結果もあります。また、トレーニング前にホエイプロテインを飲むことで筋肉を分解するコルチゾルというホルモンが抑えられ、同時に男性ホルモンの一種であるテストステロンのレベルが高まったそうです。

ホエイプロテインの種類

トレーニングをしている人なら摂っておきたいホエイプロテインですが、同じホエイプロテインでも製造方法によって、たんぱく質の含有量や吸収スピードに差が生まれます。

WPC (Whey Protein Concentrate)

WPCは、ホエイプロテインの中でも一番広く一般的に流通しています。
牛乳からチーズを作る過程で液状のホエイが分離されます。ホエイから水分を抜いて粉状にしたものがWPCです。ここでいうConcentrate(コンセントレート)とは、濃縮されたという意味です。たんぱく質だけが濃縮されていることが名前の由来となっています。

WPCには100gあたり70〜80gほどのたんぱく質が含まれます。残りの成分は、牛乳に含まれる糖分(乳糖)や脂肪分です。

WPCのメリット

WPCは、WPIのような特殊な製造過程が必要ないため、価格が安いことがメリットです。あまり価格を気にせずに、日頃から多めにプロテインを摂り続けたい人にオススメです。

また、ホエイプロテインにはたんぱく質の他にも、免疫を向上させる免疫グロブリンやラクトフェリンという成分、カルシウムなどのミネラルも含まれています。加工の過程がより少ない、WPCの方がそれらの成分がより多く含まれているといえます。

WPCの使い方

WPCは、たんぱく質以外の成分が含まれる分、WPIより吸収されるスピードが少しだけ遅いという特徴があります。そのため、トレーニング前や間食などの、吸収のスピードがあまり求められないタイミングで飲むプロテインとして活用すると良いでしょう。

WPI(Whey Protein Isolate)

WPCを加工し、たんぱく質の純度をさらに高めたのがWPIです。製造の工程が増えるぶん、WPCと比べて価格が高くなる傾向があります。その代わりにたんぱく質含有量は100gあたり90g以上にまで高まります。

WPIには次のような製法があります。

・フィルター膜処理
WPCを製造するフィルターよりも、さらに細かい特殊なフィルターでろ過し、たんぱく質の含有量を高める製造方法です。たんぱく質を低温のまま加工できるのが特徴で、熱による変性の可能性が少ないのがメリットです。

・イオン交換樹脂処理
樹脂に電荷を帯びさせて化学的に精製する方法がイオン交換樹脂処理です。イオン交換樹脂処理のメリットは、WPIの中でもたんぱく質の含有量が高いことです。

WPIのメリット

WPIのメリットは、乳脂肪分や乳糖が極限まで除去することにより、WPCよりも低カロリー・高たんぱくが実現されていることです。

乳糖を摂ることでお腹を下しやすい体質である乳糖不耐性の人が、日本人には特に多いと言われています。乳糖不耐性の人が選ぶホエイプロテインとしては、WPCよりも乳糖の少ないWPIが適しています。

WPIの使い方

WPIのメリットでもご紹介した通り、乳糖不耐性体質の人がホエイプロテインを飲む場合は、あらゆる場面においてもWPIを選ぶべきです。

また、WPCと比べて低カロリー・高たんぱくであるため、ストイックな減量をおこなっている人や、極限まで糖質を削る必要があるケトジェニックダイエットをおこなう人が飲むプロテインとしてもオススメです。

起床直後やトレーニング直後などの、吸収スピードの速さが求められる場面でも、積極的にWPIを活用すると良いでしょう。

WPH(Whey Protein Hydrolysate)

WPHは、WPCに酵素を働かせてペプチドの状態まで分解したものです。ホエイペプチドプロテインと呼ばれる場合もあります。ペプチドとはアミノ酸が2個〜数十個つながったもののことを指します。

WPHはペプチドの状態まですでに分解されたたんぱく質のため、吸収スピードは速いと言われています。アミノ酸が2つまたは3つ連なった、ジペプチドあるいはトリペプチドの状態であれば、単体のアミノ酸よりも身体に取り込まれるスピードは速くなります。

しかし、実際の製品の場合、ペプチドの状態にはバラつきがあります。アミノ酸が数個つながったものから、数十個つながったものがペプチドとして分類されるため、製品によっては実際に吸収されるスピードがWPCやWPIとあまり変わらない場合もあるかもしれません。

また価格も高価になる傾向があるので、たんぱく質の量を確保するために大量に飲むという使い方は難しいでしょう。店頭で見かける機会はほとんどありませんが、サプリメント専門店であれば取扱っている店舗もあります。

まとめ

ホエイプロテインには、他のプロテインと比べて多く筋肉量を増やしたという研究結果があります。さらにはアミノ酸のバランスに優れており、筋肉にインスリンを働かせやすくすることから、筋肉作りや運動のパフォーマンスアップに適したプロテインだと言えます。

同じホエイプロテインでも、製法によってそれぞれ特徴が異なります。
・WPC 100gあたり、70gほどたんぱく質が含まれるホエイプロテイン
・WPI 100gあたり、90g以上たんぱく質が含まれるホエイプロテイン
・WPH たんぱく質がペプチドの状態まで分解された、吸収スピードの速いホエイプロテイン

トレーニングの目的やシーンに合わせて、ホエイプロテインを使い分けてみてください。

監修者情報

山本義徳

山本 義徳(やまもと よしのり)
静岡県出身の日本のボディビルダー・トレーニング指導者。プロ野球選手のダルビッシュ有や松坂大輔などをはじめ、多くのクライアントを指導している。サプリメントにも精通しており、サプリメント博士の異名を持つ。
2019年4月に開設したYouTubeチャンネル『山本義徳 筋トレ大学』は登録者数69万人を超える。

一般社団法人 パーソナルトレーナー協会 理事

【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下) 
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる

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