トレーニング

ベンチプレスを山本義徳先生が徹底解説!筋肥大に効くフォームとは?

ベンチプレスは、トレーニングをする人にとって一番の人気種目と言っても過言ではなく、ウエイトトレーニングの象徴のような種目です。

筋肉を大きくするためにはもちろん、挙上重量を増やすために取り組む人もいるほど、ベンチプレスはやりがいのある種目です。元々はベンチプレッサーで260kgを上げた経験もあり、ボディビルダーとしても数多くの実績のある山本義徳先生がベンチプレスについて解説します。

ベンチプレスとは

ベンチプレスとは、大胸筋を鍛えるためのウエイトトレーニングの種目です。トレーニング用ベンチに仰向けになり、バーベルを垂直に押し上げる動作をおこないます。

トレーニングジムでの人気種目でもあり、ベンチプレス台が埋まってしまう光景もしばしばみられます。見栄えの良い上半身を作るための種目として優れているだけではなく、挙上重量を競う上でのわかりやすい指標となる種目であることも人気の理由でしょう。

そしてベンチプレスは、スクワット・デッドリフトと並んで、フリーウエイトトレーニングの重要種目であるのBIG3の一つとして数えられています。

関連記事:筋トレの基本と言われるBIG3は初心者もやったほうが良いのか?

ベンチプレスのやり方

1.バーの真下にアゴが来る位置で、ベンチに仰向けになる

2.81cmのラインを目印に、左右均等にバーベルを握る

3.バーベルを持ち上げて胸を張り、スタート位置で静止する
4.大胸筋の下の位置を目安にバーベルを下ろしていく
5.バーベルを押し上げていく

ベンチプレスのポイント

・ベンチプレスを開始する前の寝る位置はバーベルの真下にアゴが来るところを目安にしましょう。無駄な力を使わずにバーベルを開始位置に持って行くことができます。

・バーベルを下ろす位置が上すぎると肩の怪我を引き起こすリスクがあります。逆に下すぎると大胸筋に効かなくなってしまいます。大胸筋の下の剣状突起という骨のあたりを目安に下ろしましょう。

ベンチプレスで鍛えられる筋肉

ベンチプレスのメインターゲットはもちろん大胸筋です。そして大胸筋以外にも、補助的に上腕三頭筋と三角筋の前部が使われます。

起始と停止
筋肉の両端をそれぞれ起始(きし)と停止(ていし)と呼びます。一般的には、筋肉が収縮するときに関節の動きが小さい方が起始、大きい方が停止とされています。ターゲットとなる筋肉がどこに付着しているか意識しすることで、より効果的なトレーニングを行うことができます。

大胸筋

ベンチプレスといえば大胸筋を鍛えるためのトレーニングとしてよく知られています。高重量を扱いやすい種目のため、高い負荷を大胸筋に与えることができます。

起始

鎖骨の内側2分の1(上部)・第1〜6肋骨の肋軟骨と胸骨(中下部)

停止

上腕骨大結節稜(だいけっせつりょう)

主な作用

上部
肩関節の内旋・水平屈曲・屈曲・外転

中部

肩関節の内旋・水平屈曲

下部
肩関節の内旋・内転

上腕三頭筋

上腕三頭筋は、肘関節と肩関節の2つの関節をまたぐ筋肉です。あらゆるプレス系運動の補助筋として使われおり、ベンチプレスにおいても大きな役割を果たしています。

起始

長頭(ちょうとう)
肩甲骨の関節下結節(かんせつかけっせつ)

外側頭(がいそくとう)
上腕骨の後外面

内側頭(ないそくとう)
上腕骨の後内面

停止

肘頭(ちゅうとう)

作用

肘関節の伸展
肩関節の伸展(長頭)
肩関節の内転

三角筋(前部)

三角筋は、筋繊維の走る方向によって前部(フロント)・中部(サイド)・後部(リア)の3つに分類されます。ベンチプレスでバーベルを押し上げるときには、三角筋前部が補助的に使われます。

起始

前部
鎖骨の外側1/3

中部
肩峰(けんぽう)

後部
肩甲棘(けんこうきょく)

停止

上腕骨の三角筋粗面(さんかくきんそめん)

作用

前部
肩関節の外転・屈曲・水平屈曲

中部
外展

後部
外展・伸展・水平伸展

ベンチプレスの重量・回数・セット数

ベンチプレスは正しいフォームを身につけるだけではなく、適切な重量と回数を意識しましょう。オーバーワークにならないように気をつけることで、より効果の高いトレーニングをおこなえます。

関連記事:オーバーワークの見極め方は筋肉痛!その筋トレは正しいのか!?記録を伸ばす方法とは?

ベンチプレスの重量と回数

ベンチプレスを始めたばかりでまだ慣れないうちは、過度な追い込みはせずに余裕を持ってできる重量で、15回ほど挑戦してみましょう。フォームが安定してきたら、徐々に重さを上げていきます。

慣れてきたら6回から10回上げるのが限界になるような重量で、トレーニングの目的に応じて変化をつけながらおこないます。

ベンチプレスのセット数

基本的には3〜4セット、慣れている人は5セットほどおこなっても大丈夫ですがその場合はあまり限界まで追い込みすぎないようにしましょう。それ以上セット数を重ねてしまうと、オーバーワークの原因にもなるため、やりすぎには気をつけてください。

目的別ベンチプレスのフォームの違い

ベンチプレスをおこなう目的は大きく2つに分類されます。筋肥大のためのベンチプレスをおこなう人もいれば、とにかく挙上重量を増やすためにベンチプレスをおこなう人もいます。

参考動画:ベンチプレスが伸びない原因を山本義徳が暴く【正しいフォーム】

筋肥大のためのベンチプレス

多くの人が筋肉を大きくすることを目的にベンチプレスをおこなっていることでしょう。その場合、筋肉に効かせることを重視しておこないましょう。

フォーム

ベンチプレスを大胸筋を大きくする目的でおこなうのであれば、バーベルの軌道は地面に対して垂直になるようにしましょう。三角筋の関与を極力減らして、より大胸筋に効かせることができます。

また、手幅を広めにした方が大胸筋への刺激が強くなり、三角筋や上腕三頭筋への刺激も変わらないことが筋電図の測定結果により分かっています。

トレーニング方法

筋肉はストレスに適応することで大きくなります。そのためベンチプレスが上がらなくなる限界まで追い込むトレーニングをおこない、筋肉にストレスを与える必要があります。しかし、それを何十セットもやるとオーバーワークの原因となってしまうため、セット数は2〜3セットを目安に少なめにしましょう。

挙上重量を増やすためのベンチプレス

ベンチプレスやパワーリフティングを競技としておこなっている人であれば、ベンチプレスをおこなう目的は、とにかく重い重量を上げることです。大胸筋だけに効かせようとせず、身体をうまく連動させて全身を使って上げることで記録を伸ばしていくことができます。

フォーム

とにかく重いベンチプレスを上げたいという場合は、バーベルを斜めの効率の良い軌道で上げていく必要があります。バーベルを頭の方に斜め上に上げていくことで効率もよくなり、さらに三角筋前部の筋力も使いやすくなります。そして、より重い重量を上げることができます。

トレーニング方法

挙上重量を増やしていきたい場合、あまり筋肉を追い込みすぎないことが重要です。5回上がる重量でおこなっていたとしても、限界まで上げずにに4回でストップする、といった形で数セットおこないます。

ベンチプレスのバリエーション

ベンチプレスにはさまざまなバリエーションが存在します。これらのベンチプレスと区別するために、この記事で紹介した通常のベンチプレスのことを、フラットベンチプレスあるいは、バーベルベンチプレスと呼ぶ場合もあります。

効かせたい場所や目的に応じてさまざまなベンチプレスを使い分けてみましょう。

インクラインベンチプレス

ベンチに角度をつけ、頭の方を高くしたインクラインの状態でおこなうベンチプレスです。通常のベンチプレスと比べて、肩関節の屈曲の動きが大きくなるため、大胸筋上部への刺激が強くなります。

関連記事:インクラインベンチプレスで大胸筋上部を刺激する!山本義徳先生が解説

デクラインベンチプレス

インクラインベンチプレスとは逆に、角度をつけて頭のほうを低くしておこなうベンチプレスです。肩関節内転の動きが大きくなるため、大胸筋下部への刺激が強くなります。ジムによってはデクラインに対応できるベンチが無い場合もあります。その場合は代わりにディップスを取り入れることで大胸筋下部を鍛えることができます。

関連記事:ディップスで上半身のボリュームアップ!山本義徳先生が解説

ダンベルベンチプレス

バーベルの代わりにダンベルを使用したベンチプレスです。可動域を広くとることができるため、大胸筋のストレッチと収縮がより強い種目です。

ダンベルベンチプレス

スミスマシンベンチプレス

バーベルの代わりにスミスマシンを使っておこなうベンチプレスです。軌道が定まっており動きが安定しているため筋肉への刺激は少なくなってしまいますが、安全性が高いというメリットもあります。

関連記事:山本義徳先生が、スミスマシンをつかった”ベンチプレス”をご紹介

260kgのベンチプレスを上げた驚異のトレーニング方法

山本先生が初めてベンチプレスに挑戦したのが高校2年生のときでした。初めてで80kgを上げるという驚きの記録をたたき出し、周りから一目置かれたことをきっかけに本格的にベンチプレスに取り組み始めます。

大学時代には「年齢×10kgを上げられるようになる」という目標のもと、順調に記録を伸ばしていきます。そして26歳になると、ついに260kgを上げるまでに至りました。

山本先生いわく「200kgは比較的簡単に到達してしまった。」とのことなので、普通の人がそのまま真似できる内容ではないかもしれません。その当時のトレーニングメニューは、全身を4分割で、肩と三頭筋の日に軽い重量、胸と上腕二頭筋の日には重い重量でのベンチプレスを交互におこなうというものでした。

より詳しくはこちら:ベンチプレスが伸びないのはなぜ?山本義徳氏が解説する3つのダメな理由と伸ばし方!

その後の山本先生は、本格的なボディビルのためのトレーニングに取り組みはじめます。そのためベンチプレスの記録を積極的に伸ばすためのトレーニングはおこなわず、筋肉量を増やすことを目的としたトレーニングへとシフトしていきました。その結果、それまでの日本人が誰も到達しなかったボディビルダーとしての実績を手にしたのは誰もが知るところです。

参考動画:【必見!】ベンチプレスで260kgをあげた際のトレーニング方法を教えます!

まとめ

ベンチプレスは、目的によってフォームが変わります。そしてさまざまなバリエーションも存在します。基本的なフォームが定まり、ある程度の重量を扱うことができるようになったら、より高重量を上げることのできるフォームや、目的に応じてさまざまなバリエーションを試してください。

ただベンチプレスをやるだけではなく、目的意識をもって取り組むことで、同じベンチプレスでも結果に違いをもたらすはずです。

監修者情報

山本義徳

山本 義徳(やまもと よしのり)
静岡県出身の日本のボディビルダー・トレーニング指導者。プロ野球選手のダルビッシュ有や松坂大輔などをはじめ、多くのクライアントを指導している。サプリメントにも精通しており、サプリメント博士の異名を持つ。
2019年4月に開設したYouTubeチャンネル『山本義徳 筋トレ大学』は登録者数69万人を超える。

一般社団法人 パーソナルトレーナー協会 理事

【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下) 
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる

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