トレーニングに熟練している人ほど「身体作りに大切なのは、トレーニングよりも食事である」とよく言うものです。食事のコントロール抜きには、減量もバルクアップも成功することはありません。
そして実際にどう食事のメニューを組み立てていくか考える時に、役に立つ指標がPFCバランスです。ここでは山本義徳先生がオススメする、目的に応じたPFCバランスをご紹介します。
PFCバランスとは?
PFCとは、3大栄養素に当たるタンパク質(Protein)脂質(Fat)炭水化物(Carbohydrate)の頭文字をとった言葉です。
そして、PFCバランスとは摂取カロリーのうち3大栄養素がそれぞれどれくらいの割合を占めるかの比率のことを指します。
バルクアップあるいは減量など、それぞれに適切なPFCバランスが存在します。目的に応じてPFCバランスを意識しながら食事をコントロールをすることで、理想の体型を目指しやすくなります。
身体を変えるためには、トレーニングがもちろん欠かせませんが、食事はそれ以上に重要な要素です。筋トレの成果をしっかりと出したいのであれば、摂取カロリーとPFCバランスを意識した食事をしてみましょう。
バルクアップのPFCバランス
バルクアップの際により重要なのは、細かいバランスよりも総摂取カロリーです。(摂取カロリーについては後述します)
まずは量を満たすことを最重要と考えて、その上でこののPFCバランスを参考にすると良いでしょう。
P : タンパク質 30%
F : 脂質 20~30%
C : 炭水化物 40~50%
そして、バルクアップを成功させるにあたっては、3大栄養素の全てが欠かせないものとなります。

まず、バルクアップではインスリンの働きを利用することが重要です。炭水化物を食べるとインスリンというホルモンが放出されます。そして筋肉の材料であるアミノ酸は、インスリンによって筋肉に運ばれます。
これがバルクアップで炭水化物が重要だと言われる理由です。そして、運動によって消費されたグリコーゲンを早く回復させるという点でも炭水化物は重要です。
摂取した炭水化物は、グリコーゲンとなって筋肉や肝臓に蓄えられます。肝臓にグリコーゲンがしっかり溜まっていると身体は「十分にエネルギーがある」と判断します。その状態になって初めて、筋肉が大きくなるためにエネルギーが使われる状態になります。
タンパク質は言うまでもなく大切なものですが、同様に脂質も重要です。
脂質は細胞を形づくる細胞膜の材料であり、身体にとって必要な反応を司る物質であるエイコサノイドの材料でもあります。さらに身体を動かすエネルギーでもあり、さまざまな役割がありますが、バルクアップにおいて特に重要なのは、男性ホルモンの材料となることです。
テストステロンに代表される男性ホルモンは、筋肉のタンパク質の合成を促進する働きの他、筋肉の分解を防ぐ働きもあります。バルクアップには、男性ホルモンの分泌が大きな役割を持つため、脂質不足にならない食事を心がけましょう。
減量のPFCバランス
山本義徳先生が推奨する減量方法は、糖質の摂取を控えることで効率よく体脂肪を利用することのできる、ケトジェニックダイエットです。
ケトジェニックダイエットでは、炭水化物の割合をかなり減らし、その代わりに脂質を増やします。
P : タンパク質 15~30%
F : 脂質 60~70%
C : 炭水化物 10~15%
一般的な食事と比べると、カロリーのうちの60~70%の脂質はかなり大量です。脂質を大量に摂る際には、牛肉や豚肉などの脂質を豊富に含む肉類や、アボカドやナッツ、MCTオイルなどを活用すると良いでしょう。

摂取カロリーの求め方
食事メニューを組み立てる上で、PFCバランスと同様に気をつけたいのが、摂取カロリーです。バルクアップではカロリーを多く、減量ではカロリーを少なくする必要があります。
PFCバランスが出来ていたとしても、1日の摂取カロリー合計が多すぎたり、あるいは少なすぎても目的とするゴールにたどり着くことはできません。
自身の体重と日常生活での活動の強度によって、摂取するべきカロリーの目安を知ることができます。
1日に摂取するべきカロリーを知るためには、まずは基礎代謝を求めてみましょう。
基礎代謝=除脂肪体重×28.5
ジムなどに置いてある体組成計で、自分の除脂肪体重を知ることができます。その除脂肪体重に28.5を掛けた値が、おおよその基礎代謝量です。この計算式は、一般人とは体組成が大きく異なるアスリート向けに、国立スポーツ科学センターが提唱したものです。
基礎代謝量とは、全く活動しない状態で消費されるカロリーのことです。そして基礎代謝量が分かると、1日に消費するおおよそのカロリーを求めることができます。
1日に消費されるおおよそのカロリーを求めるためには、基礎代謝に生活活動強度指数を掛けます。
消費カロリー=基礎代謝×生活活動強度指数
生活活動強度指数とは、日常生活においてどのくらいの負荷がかかっているかを表す数値です。
活動の強度に応じて、それぞれ指数が、1.3(低い)、1.5(やや低い)、1.7(適度)、1.9(高い)の4つに当てはめられます。
普段からあまり動かない人であれば基礎代謝に1.3を、ハードにトレーニングをしている人は基礎代謝に1.9を掛けます。そうすることで、自身が1日に消費するおおよそのカロリーを求めることができます。

この次は、実際に摂取するカロリーを求めてみましょう。
摂取目安カロリー=消費カロリー+500または消費カロリー−500
バルクアップであれば「消費カロリー+500」
減量であれば「消費カロリー−500」
をすると、1日に摂取するべきカロリーの目安を求めることができます。
1日に消費するカロリーから、+500 kcalあるいは−500kcalの範囲であれば、健康的にバルクアップや減量に取り組むことができます。
基礎代謝が1500kcalの人の例
例として、基礎代謝が1500kcalの人がいたとします。
この人は週5回ハードなウエイトトレーニングを行い、残りの週2日は身体を回復させるための完全休養の日としています。
この人が1日に消費するカロリーと、摂取するべきカロリーを求めてみましょう。
トレーニングをする日としない日では活動量の差が大きいので、生活活動強度指数の平均値を使うことで、より確実な消費カロリーを求めることができます。
トレーニングを行う日の生活活動強度指数は1.9
オフの日の生活活動強度指数は1.3
1.9が5日間、1.3が2日間なので、
(1.9×5+1.3×2)÷7 = 1.72
1500(kcal)×1.72=2580(kcal)
この人の1日の消費カロリーは、平均するとおおよそ2580kcalであることが分かりました。
したがって、
バルクアップの場合、2580(kcal)+500(kcal)=3080(kcal)
減量の場合、2580(kcal)-500(kcal)=2080(kcal)
がこの人が1日に摂取するべきカロリーとなります。
3大栄養素の摂取量を求める
では先ほど導き出した摂取カロリーをPFCバランスに当てはめて、実際にどのくらいのグラム数を摂ればいいのか求めてみましょう。
バルクアップの場合
先ほど求めたバルクアップで摂るべき3080kcalに、P30% F30% C40%を当てはめると、
P : タンパク質 924kcal
F : 脂質 924kcal
C : 炭水化物 1232kcal
という内訳になります。
タンパク質は1gあたり4kcal、脂質は9kcal、炭水化物は4kcalのエネルギーを持ちます。
したがって、
P : タンパク質 231g
F : 脂質 102g
C : 炭水化物 308g
が実際の摂取量です。3大栄養素を、それぞれどのくらい摂取すれば良いのか分かれば、食事のメニューが組み立てやすくなります。
減量の場合
今度は減量時に実際に摂取するグラム数を求めてみましょう。
減量時の摂取カロリー2080kcalに、P30% F60% C10%を当てはめると、
P : タンパク質 624kcal
F : 脂質 1248kcal
C : 炭水化物 208kcal
となります。したがって、
P : タンパク質 156g
F : 脂質 138g
C : 炭水化物 52g
と、それぞれのグラム数を求めることができました。
自分の摂取カロリーや、具体的な食事の量を知るうえで、ぜひ参考にしてください。
まとめ
バルクアップのPFCバランス
タンパク質 30% 脂質 20~30% 炭水化物 40~50%
摂取カロリー=消費カロリー+500
減量のPFCバランス
タンパク質 15~30% 脂質 60~70% 炭水化物 10~15%
摂取カロリー=消費カロリー-500
バルクアップの場合も減量の場合も、自分の消費カロリーと摂取カロリーを把握しておくことが重要です。その上で目的に応じて適したPFCバランスの食事をすることで、トレーニングの成果がより確実なものとなるでしょう。
監修者情報

山本 義徳(やまもと よしのり)
静岡県出身の日本のボディビルダー・トレーニング指導者。プロ野球選手のダルビッシュ有や松坂大輔などをはじめ、多くのクライアントを指導している。サプリメントにも精通しており、サプリメント博士の異名を持つ。
2019年4月に開設したYouTubeチャンネル『山本義徳 筋トレ大学』は登録者数30万人を超える。
【主な著書】
・ウェイトトレーニングー実践編ー
・ウェイトトレーニングー理論編ー
・アスリートのための最新栄養学(上)
・アスリートのための最新栄養学 (下)
・最高の健康 科学的に衰えない体をつくる
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